闘い。

 別に死にたい訳じゃない。ただ、自分が生きているのか死んでいるのか、分からなかった。生きながら死んでいるような気がした。
 別に生きたい訳じゃない。ただ、自分が生きているのか死んでいるのか、はっきりさせたかった。生きながら死んでいるなんて、たまらなかった。生きている、って実感が欲しかった。
 そういう訳で、俺は今、熊の檻の中にいる。
 熊は俺を睨め付け、唸っている。対する俺の武器はサバイバルナイフ一本。今までずっと一緒に闘ってきた、俺の愛する唯一の相棒だ。
 俺は熊に背を向けた。途端、熊は俺に襲い掛かってきた。鋭い爪が、俺の肩目掛けて振り下ろされる。俺は紙一重でそれを避けた。だが少し失敗して、シャツの背中を切り裂かれた。…ああ、畜生め。お気に入りだったのに。
 それから、熊は狂ったように俺を切り裂こうと襲ってきた。俺はその爪と牙の凄まじい攻撃を全て紙一重で避けていく。…これがまた、楽しいのだ。失敗して服を裂かれる度、俺は言い様のない快感に酔い痴れた。ああ、生きているんだ、俺は。
 だがもう裸同然になり、いい加減疲れてきた。俺は熊の一閃を軽々と避け、熊の肩に乗り、思い切りナイフを熊の心臓目掛けて突き立てた。熊はくぐもった声を上げ、卒倒し、死んだ。
 この熊もなかなか強かった。だが伊賀忍術を修めた俺にとっては大した事ない相手だった。
 俺はその場を後にした。
 そしてまた、俺は生きている実感を求めて闘い続ける。

icon羽根2


 え~と、アホですね(笑)。確かコレは高3の時に書きました。コレを最初に見せた男子には結構ウケてましたが、他は…?
ちなみにこの男の人、僕の中では「哲雄」という名前です(笑)。


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